A Song For Your Love

要するに「好き」ってこと

アイドルにお金を使うこと

適格消費者団体「消費者被害防止ネットワーク東海」が2016年10月18付で、ジャニーズファミリークラブに対して申入書を送付しました。

 

togetter.com

 

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私もファンとしてこの事務所に関わる中で思うところがあったので、この規約是正の申し入れはなかなか良い試みだと思っていました。

一つのトピックに対して色々な意見を持つ人がいるのは当然のことで、賛成の人も反対の人もいるなぁふんふんなるほど、といった具合でTwitterを見ていたのですが、あるツイートに度肝を抜かれました。ニュアンスですがこんな感じ。

 

「アイドルにお金を使うことは『買い物』ではない。ましてやファンクラブには、応援したいから入っている。あなたたちは好きな人をお金で買っているつもりか。」

 

愕然としました。だって私は、「好きな人をお金で買っている」つもりだったから。

という訳で、今回はTwitterでも触れましたが「アイドルにお金を使うこと」について話したいと思います。

 

「ヲタクが日本経済をまわしてる」なんて昨今のメディアで騒がれるほど、我々ヲタクは金を使います。引くほど使います。

私はアイドル沼に沈んだ身ですが、これはどの沼に沈んでいても「ヲタク」の肩書を持っていれば大抵そうなのではないかな、と思います。

 

では、私およびこの沼にいる人たちがお金を費やしている「アイドル」って、何なのでしょうか。

 

私は、芸能事務所は「企業」であり「売り手」、アイドルは「売り手」かつ「商品」、ヲタクやファンと呼ばれる人たちは「消費者」だと思っています。

 

「アイドル」は、商品として特殊です。なぜなら、商品自体に主体性があるから。生身の人間なのだから当たり前です。ビジュアル、パフォーマンス性、人間性、すべてが商品の一部です。さらに、アイドルは人々の「好き」という気持ちを刺激してきます。特に異性のアイドルを応援している場合は、少なからずときめきや癒しといった恋愛感情に似た何かを持っている人も多いと思います。

ある人間に特別な感情を抱き、応援する。それがアイドルです。当然、情も湧きます。

きっと、いやだからこそ、「好き」という思い、あるいは情や感情移入によって「好きな人をお金で買うのか」という考えが出てくるのだと思います。

 

では、この「好きな人をお金で買う」と形容される経済活動はどのようなものなのか嚙み砕いていきたいと思います。

 

アイドルは「芸能」「娯楽」であり「エンターテイメント」という括りに入ります。

では、普段私たちは「エンターテイメント」の何に対してお金を払っているのでしょうか。

映画、漫画、小説、絵画、音楽、舞台。この世界には「作品」と呼ばれるものが数多く存在します。

 

では、あなたがその「作品」を見たい・読みたいと思う動機は何ですか。

 

口コミ?売り上げランキング?世界観?サントラ?

 

例えばあなたは、こんな理由で映画を見に行ったことはありませんか。

 

「○○監督の作品だから」

 

ジブリだから」

 

ハリーポッターシリーズだから」

 

「映画」という作品を見るには、(テレビ放送などでなければ)映画館かレンタルショップに行ってお金を払わなければなりません。映画を見るということは、すなわちその「作品」に一定額を払う価値があると判断したということにも捉えられます。

「作品」は、ある意味「商品」なのです。

 

そして、上記のような理由で映画を見ることは、すなわち「作品」に関わった人や団体、企業に価値を見出しているのだと私は思います。きっと、今までの評価や功績、世界観などから「彼/彼女/彼らの作品なら間違いない」「このシリーズならぜひ見たい」という思いを持って映画を見るのでしょう。所謂「ネームバリュー」というやつですね。

 

アイドルの場合は、それが個人名です。「○○監督」ではなく「河合郁人」、「ジブリ」ではなく「中島健人」、「ハリーポッター」ではなく「萩谷慧悟」。

一例として勝手に自担の名前を拝借しましたが、ようするにこういうことです。

「彼」が好きだから、「彼」が関わっているものがほしい。CD、DVD、雑誌、コンサート。

 

「彼が出ているなら間違いない」

 

「彼がやるならぜひ見たい」

 

そんな気持ちを持って、私たちは彼に関するものにお金を払います。これは、「ジブリだから」「ハリーポッターだから」という理由で映画を見るのと同じことです。悪い理由でも、非難されるべき理由でもありません。

「彼」という一つのエンターテイメント商品に惹かれる正当な理由です。

 

しかも、「彼」に付与されている商品価値は「作品」のように世界観や功績だけではありません。容姿はもちろんだけれど、垣間見える努力、表に現れる実力。

そして何より「好き」という気持ち。

 

冷静に考えることはあまりないけれど、この「好き」という気持ちも消費者の購買要因の一つです。

 

ほら、アイドルってよく言うじゃないですか。

 

「僕/私のことを好きになって?」

 

と。

「好きになってもらう」ことは、「顧客が増える」ことと同義です。

私はアイドルになったことがないからわからないけれど(当たり前である)、きっとアイドルは自身が商品であることを自覚しているのではないかと思ったりします。

 

お金を払う対象が生身の人間であるから、しかも自分の好きな人間であるから。アイドルに対してお金を使うことを「好きな人をお金で買う」とマイナスに感じてしまう気持ちも理解できます。でも、アイドルも商品なんです。

 

中島健人にも家族がいて友人がいて、「中島健人」という1人の人間としての生活があります。それと同時に、たくさんのファンの前でステージに立ち、甘い言葉で会場を沸かせて私たちに夢を見させてくれるアイドル「中島健人」というエンターテイメント商品としての一面もあるのです。

私たちがお金を払っているのは、このエンターテイメント商品としての「中島健人」です。

 

だから、アイドルを応援することは「好きな人をお金を買う」ことではなく、「好きな商品をお金で買う」ことなのです。

 

そしてもう一つ。「買う」という行為が日常的過ぎてつい忘れてしまうけれど、「買う」という行為は「契約」です。この前、家庭科の授業で習いました。金銭と物の授受を取り決める「契約」なんです。

 

できることなら、双方に対等な利益のある「契約」が結べる社会であるべきです。それがなっていないと判断され得るのなら、契約に関する規約にメスが入るのは当然のことです。

 

「好き」という気持ちは、人を盲目にします。好きな人がすることは何でも良く見えてしまうし、好きな人がいる場所は正しいものだと感じてしまう。

 

でも、「好き」という感情に流されないでください。飲み込まれないでください。

 

アイドルにお金を使うことは、お布施ではありません。チャリティーではありません。「ものを買う」という契約を結ぶことです。それは、ファンクラブに対しても然りです。

 

私たちは「好きな人をお金で買っている」けれど、それは悪いことじゃない。当たり前のことです。ハマった沼が特殊だっただけで、根本的には日用品を買ったりすることと同じです。恋愛風味の経済活動です。

 

これからも、「好き」に身を任せつつ「好き」に飲み込まれないで日本経済を回していきましょう。

 

長文乱文にお付き合い頂き、ありがとうございました。